Rental Wife

1/16
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ

Rental Wife

 ずっと結婚に憧れていた。友人の結婚式に出席するたび、羨ましく思ってきた。だけど、二十九歳になった僕は、結婚どころか、これまで女性と付き合ったことすらない。お見合いも何度かしたが、結局話は纏まらない。婚活パーティーに参加しても、うまく相手を見つけられない。そんな僕が結婚するなんて、夢のまた夢だ。  そんな僕の元に舞い込んできたのが、『レンタルワイフ』と大きな文字で書かれたチラシだった。家政婦紹介所の広告かと思い目を通してみると、何やら様子が違う。チラシの中では、本当の結婚生活が謳われている。どうせ新手の詐欺なのだろうと思いつつも、話を聞くだけならという思いも湧き上がってくる。小一時間ほど悩んだ挙げ句、僕はチラシに書かれた電話番号をダイヤルした。  三十分ほどしてから、玄関のチャイムがなった。扉を開けると、四十代半ばくらいの、小太りなスーツ姿の男が立っていた。 「この度は当社にご連絡いただきありがとうございます。(わたくし)、営業担当の坂井(さかい)義朝(よしとも)と申します」  男は型通りの挨拶をしてから名刺を出す。僕は名刺を受け取り、坂井を居間に案内した。     
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!