Rental Wife

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「いよいよ、最後の夜だね。これまで本当にありがとう。楽しい時間だったよ。僕が結婚できるなんて思ってなかったし、これからもこの思い出を胸に頑張っていくよ。僕の妻は生涯で君一人だけだ」 「私もとても幸せだったわ。ありがとう、忠雄さん。いつか神戸で買ってもらった香水、私もあれを嗅いであなたを思い出すわ」  突然、玲の瞳から涙が溢れ、頬を伝う。 「君にどうしても訊きたいことがあるんだ」 「何?」  玲が涙声で応える。 「僕は本当に君を愛してる。できることならば、明日離婚したりなんかしたくない。これからもずっと一緒にいたい。だけど、君はどうなんだろう? やっぱり仕事だから、僕を愛してるふりをしてくれていたんだろう?」  僕の問いに、玲はすぐには答えなかった。しばらく泣いて、それからゆっくりと口を開く。 「最初はそうだった。でも、あなたが私を大切にしてくれて、心の底から愛してくれているのがわかって……今は私もあなたを愛してる」 「だったら、これからもずっと一緒にいよう」 「それはダメよ。会社との契約があるんだもの。私はあなたと別れたあと、しばらく時間を置いて、また別の男の人と結婚させられるのよ」 「そんなのイヤだ!!」  僕は叫んだ。  翌日、朝一番で僕は坂井に連絡を取った。すると、坂井はすぐにやって来た。僕は玲を寝室に隠し、一人で坂井と対峙する。     
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