Rental Wife

15/16
前へ
/16ページ
次へ
「坂井さん、僕は玲と離婚したくない。僕たちが書いた離婚届を返してくれないか?」  僕の言葉に、坂井は少し戸惑いながらも、鞄の中から一枚の書類を取り出す。 「一応、これは裏メニューですが、追加で百日分お支払いいただければ、離婚届をお返しできます。そして、本当の夫婦として、これから末長らくお過ごしいただけますが、いかがいたしましょう?」 「もちろん支払うさ。すぐにと言うのなら、支払う用意もある」  僕は金庫の中から百万円の束を五つ出して、坂井の前に置いた。 「結構です。では、こちらにサインを」  言われるまま書類にサインすると、坂井が鞄の中から離婚届を取り出す。僕はそれを奪い取り、思い切り破いた。これで玲とずっと一緒にいられると、僕は安堵した。 「玲、出てきていいよ」  僕は寝室の玲を呼び寄せた。玲は寝室から出てくると、僕の隣にドカッと勢いよく腰を下ろし、大胆に足を組む。そして、僕に向かって、 「お茶!!」  と言い放つ。玲のあまりの豹変ぶりに、何事かと戸惑っていると、坂井が笑顔で言った。 「当社の取り扱う女性は、みんな性格に難があり、結婚に向かない方ばかりなんです。そんな結婚に縁のない女性を永遠の伴侶に選ぶなんて、あなたは何と奇特な方なんでしょう」     
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加