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とはいえ、僕はどうしても玲に会ってみたかった。まだ写真しか見ていないその女性に、心の底から惹かれ、その沸き立つ想いは、もう抑えようもなかった。
「坂井さん。橋本玲さんをレンタルさせていただきたいと思います」
「かしこまりました。それで、期間はどのようにいたしましょうか?」
「最大の百日間でお願いします」
「ありがとうございます。きっと、彼女も喜ぶことでしょう。それでは早速、婚姻届と離婚届を作成しましょう」
坂井はそう言うと、鞄の中から婚姻届と離婚届を取り出す。その二枚の書類には、女性らしい丸っこい文字で必要事項が記入されており、印鑑も押してある。僕は書類に必要事項を記入し、最後に幸崎忠雄と自分の名前を記入して、しっかりと押印してから坂井に手渡した。坂井は届出書をじっくりと確認してから、
「はい、大丈夫です」
と頷いた。
「それではよろしくお願いします」
「わかりました。それでは今後のスケジュールですが、まず、料金をこちらの口座にお振込みください」
坂井はそう言うと、会社名義の預金口座番号が書かれた紙切れを差し出した。
「入金の確認が取れましたら、こちらの方で婚姻届を市役所に提出します。それが済みましたら、橋本玲さんがこちらにまいりますので、よろしくお願いします。大切にしてやってください」
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