モフモフがモフモフでなくなる時。

2/7
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
私の飼い主である男の事を紹介しよう。 名前を 神谷 玲央。人間の雄だ。 身長はそれなりに高く、顔も悪くはない。 だがいかんせん、頼りのないやつだ。 こんなんで世の中をやっていけるのか…疑問でならない。 しかし、コイツが身を粉にして働かなければ、私の猫缶のランクが下がる事にもなりかねない。 この私に似合うこだわりの猫缶を安物に変えられてはたまらない。 なので、毎朝寝起きの悪いコイツを起こしてやるのだ。 「れお~ん、仕事行きたくないよ~」 レオンというのは、私の名前だ。 飼い主が玲央だから、レオンと安直すぎる名付け方だが、レオンというのは百獣の王ライオンの意味もあるから良しとしよう。 朝から大の男が猫相手にこの有様である。 お前が仕事に行きたくないという、おはようと同じレベルの戯言などどうでもいい。 早く飯使いらしく、飯の支度をしろ。 私のお腹につっこんだ玲央の頭を蹴ると、「痛い」と言いながら、ごそごそと立ち上がった。 やっと仕事をまっとうする気になったらしい。 顔を洗って、歯を磨いて…仕方がない、そのくらいは待ってやろう。 しかし、待てど暮らせど玲央は洗面所から出てこない。 しまった!!今日は髭 剃りの日だ…これは時間がかかる…2日に1回のことにしろ、この時間がとてももどかしい。 早くあの美味しい猫缶にカリカリを混ぜた贅沢な逸品を口いっぱいに頬張りたい… しかし、私ほどの猫が食事一つにそこまで執着するのはみっともない。 私はいたって普通を装い、毛づくろいを続ける。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!