意地悪しないで

3/16
前へ
/16ページ
次へ
それでも離れられないのは、私が晃を好きだから。 惚れたものが負け。 まさにその通りだと思う。 涙がじわりと目に浮かんで。 それがこぼれ落ちる前に、二人の前から立ち去った。 「坂梨さん?」 俯きながら廊下を歩いていると、誰かに声をかけらる。 思わず前を向くと、涙で歪む視界には、同じクラスの男の子である長谷部(はせべ)くんの姿が映っていた。 「えっ、どうして泣いて」 「な、泣いてないよ!じゃ、じゃあまた明日ね!」 慌ててもう一度俯き、立ち去ろうとしたけれど。 長谷部くんがそれを許してくれなかった。 「泣いている坂梨さんを一人にはできないよ」 優しい長谷部くんが見せた、真剣な表情。 私は彼に甘えることにした。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

160人が本棚に入れています
本棚に追加