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「何かを録音したわけだ。それを私に聞いてほしい、と」
「そうです」
「単刀直入に聞こう。何を録音したのかね? 君みたいな輩は結構くるんだよ。湖面に拡がる風紋をUMAと言ってみたり、風の唸りを幽霊の声とか言ってみたりね」
教授は首を傾げて天井を見た。
「でも、それは別にいいんだ。そういうものだからね。ロマンって奴さ。
だから君が何を録音していようとも、僕は文句は言わない。むしろウェルカムさ。
だけど、今は――正直に言うと、授業まで仮眠をとろうと思っていたんだ。昨日、夜が遅かったからね。だから聞くんだが、それは緊急性を要するものなのかね? 違うだろう?
なら、出直してきてくれないか? そうだな、明日の朝一番とか……」
俺は、きっぱりと首を振って否定した。
「それはダメです。一刻を争うのです」
教授は、ほうと口を丸くした。
「どういうことかな?」
「これに入っているのは、友人の告白です。昨日の夜、録音したものです。彼は俺がトイレに行っている間に、いなくなりました。今も連絡が取れません。ですから――」
「待った、待った。その――」
教授は五本の指を突き合わせ、片眉を上げた。
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