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「君が言う所の失踪から、まだ時間が経ってない。ただ単に携帯が故障している可能性もある。それに、失踪なら警察に話すのが筋だろう?」
俺は五本の指を突き合わせ、片眉を上げた。
「だからです。これから先、本当にあいつが失踪してしまった場合、警察に言っても信用されないどころか相手にされない失踪理由がここにあるんです。
それに、今ならあいつを掴まえられるかもしれないんです。その……手遅れになる前に」
教授は再び天井を見上げ、成程ねえ、と呟いた。
「それが都市伝説絡み、というわけか。そして、君は友人を探す為に僕の助言を聞きに来た、と?」
「そうです」
それだけじゃない。
教授はにっこりと微笑んだ。
「興味が湧いてきた。聞こうじゃないか。君の言ってる事が、一から百まで嘘だとしても、興味を持ってしまったから仕様が無いな」
「ありがとうございます」
教授は、ふっと僕の後ろ――粗末な作りのドアの方を眺めながら、溜息をついた。
「やれやれ……眠いのに僕も物好きなもんだ。
駄目だと判っている物ほど、魅かれてしまう……好奇心って奴はドラッグに似ているんだろうね。僕はドラッグは一切やったことが無いけれど、そっちに踏み出してしまう連中の最初の一歩を、馬鹿にはできないんだよねえ……」
俺は教授の独白を無視し、再生ボタンに指をかけた。
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