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そうして大盛況で幕を閉じた読み聞かせは強い要望の声によって、三日に一度開催される定例の催し事となった。
また第二回、第三回と読み手を代えて試した結果、僕ら三人は読み手となる日をローテーションで組んで、それぞれ担当する作品のジャンルも決めるようにした。
マリスの読み聞かせはオルゴールのように透き通る声で全く抑揚無く喋る。それが心地良いのか彼女の読み聞かせは大人の傾聴者が多くなるので、少し難しいものや専門的な書物といった青年向けのものを担当するようになった。また驚きの特技としてどの本でもそらで音読できるため、内容的に文字だけでなく挿絵が不可欠なもの――端的に言えば図鑑のような本でもマリスが読みつつ傾聴者に本を回すことで読み聞かせが可能となるので、それを求めて聴きに来る人も居た。
トリエは感情を抑えて読むことができず朗読に近くなってしまうが、それが幼い子、特に言葉を覚えたてくらいの子に受けるので、児童向けの本を担当するようにした。彼女が読み聞かせをする日は、休憩室に笑い声や感動で泣く声が絶えなくなった。
三者三様の読み聞かせは近隣住民だけでなく少し離れた地区からも足を運ぶ人を増やしたようで、ヒーストリアは前以上の盛況を取り戻した。なにより本を借りる人も借りない人も皆笑顔で帰っていくのが僕にはとても嬉しかった。
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