第五章 逆襲のエリヤ

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第五章 逆襲のエリヤ

 一週間の工事を無事に終えた俺は、商会の事務所にいた。一仕事を終え、心は開放感に満たされていた。だが、のんびり寛いでいたわけではない。工事が終わった後は、工事報告書や完成図書を製作・納入しなければならない。休んでいる暇など無いのだ。  と言っても、すぐにテンションが上って仕事ができるわけではない。つなぎの仕事として雑務を行う。例えば、ゴブリン男どもからの請求書にサインをしたり、工事で発生した突発の費用を現地費として請求する申請書を作成する。  これらの仕事は、仕事として必要でありながらも、それほど頭を使わずに出来るのが良い。と言って、チェックに抜けがあると、事務処理を行っているピノに怒られてしまう。経理全般を取り仕切っているピノは、ある意味支店長より恐ろしい存在だ。この前も、「こんな書類を回してくるとは、てめえの目は節穴かぁッ!」と支店長に怒鳴りつけてたっけな。  コーヒーを飲みながら、思い出し笑いをしていると、支店長が呼ぶ声がする。無視をしようかと一瞬思うが、そんなわけにはいかない。面倒くさいと思いながら、自分の机を離れ支店長室に入る。  そこには、部屋の上座に尊大に座っている支店長と、その横に置かれている来客用の豪奢な椅子に座っている壮年の男性がいた。今までに見たことがない男性は、メガネをしていて知的に見える。その奥から感じられる鋭い眼光と、オールバックに纏めた銀髪の髪型を見るに、商人というより官僚の方が似合っていそうに感じられる。 「今回の工事の利益を知っているか?」  支店長が頬杖をつきながら俺に訊いてくる。 「多分、黒字にはなるかと」  俺が明るい声で答えると、頬杖をつくのを止めて、右手で机をバンバンと叩く。 「黒字? そんなんは当たり前だ。どれだけ利益を出すかが重要なんだ。そのために仕事をしているんだろ」 「そうですが、赤字になりそうなところから黒字に持っていったんですから、問題ないですよね」 「フザケンナ」  支店長は、手が痛くないのか? と訊きたくなるような勢いで机を叩く。 「計画予算と実行予算が乖離してるじゃねぇか。計画予算では十分な黒字がでるはずだったのに」 「待ってください。それは、実行段階で計画時のミスが……」 「言い訳すんじゃねぇ!」  支店長の怒鳴り声に、動きが止まる。言い訳なんかではない。事実を説明しようとしているだけだ。ちゃんと説明できれば俺の方に部があるはず。けれども、支店長は、俺にその余裕を与える気は全く無いようだ。  壮年の男性の視線を感じる中、俺は支店長とにらみ合い続けていた。
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