第一章 代理人エリヤ・フォーソード

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 元々は、それほど待遇が酷かったわけではない。いや、今でも酷くはないかもしれない。ノーデンス商会ラジエル支社以外は。  俺が住んでいる迷宮都市ラジエルは、仕事に恵まれている。  地下迷宮の出入り口である巨大な穴から湧き出てくる魔物たち、その抑えとして生まれたラジエルは、王都より離れた辺境でありながらも活気がある。魔物がしばしば破壊する防御壁の修理、監視機能の拡充のために、十分なお金が都市に落とされる。それを目当てに人が集まれば、商業も娯楽も発達する。景気が良くなる理由がある。  だからと言って、ラジエル支社が儲かっているわけではない。仕事があれば競争も激しくなる。美味しい仕事は大貴族が取り、商会に来る頃にはかなり旨味が減っている。それでも、公共事業は悪くはない。支社長が代わるまでは十分な損益が確保できていた。
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