第一章 代理人エリヤ・フォーソード

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 今の支社長になってから経営状況が急速に悪化した。今まで受注できていた仕事をことごとくライバル会社に奪われたからだ。  ジリ貧になる前に、どうにかして仕事を取り返そう。普通の人間ならそう考える。少なくても俺だったら、競争に勝とうとする。  ところが、支社長は違う。取りづらい仕事は諦める。その代りに、安値でも良いから簡単に取れる仕事を受ける。採算なんか度外視。公共事業でも五次、六次下請けとか猫も跨ぎそうな案件。若しくは、民間の仕事――それも質の悪い、採算が悪いか納期の厳しい仕事を狙いすましたかのように受注する。  当然、赤字だ。自分でできる範囲で採算を改善できるならマシ。残業してでも、安息日に働いても構わない。宗教警察からコソコソ逃げ回りながら、結界用水晶の設置工事を進めるのはお手のもんだ。  だが、工事は一人じゃ出来ない。商会の工員なら多少の無理もお願いできるが、外注はそうはいかない。あいつら、こっちの都合(のうき)なんか気にしない。だから、遅延する。支社長室に呼びつけられるほどに。
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