第一章 代理人エリヤ・フォーソード

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「どうして納期が遅れたんだ!」  支社長は、机の前に俺を立たせると、唾を飛ばしながら怒鳴りつけてくる。 「元の計画に無理があります。事前検討会議にて話したとおりです」 「エリヤ、お前、死ぬ気で働いたのか?」 「……」  意味がわからない。工事の納期が遅延したのは、まず、工事監督である支社長の顧客への説明と調整が不十分で、本来完成しているはずの基礎工事が出来ていなかったからだ。そして、次に、支社長が呼んだ訳のわからない外注作業者のせいだ。  商会の直属の作業者の代わりに来た作業者は、ゴブリンか? と質問したくなるようなワシ鼻の男。前歯がなくモゴモゴと話す。何を言っているのか聞き取れない。会話なんかどうでも良い働けば。と言いたいのだが、基礎的な知識も有しておらず、返事の声は大きいが、動きは遅い。三十分働いたかと思いきや、一時間休憩を要求する。一人だけでも厄介なのに、ゴブリン男は二人の部下を連れてきた。しかも、より頭を悪くしたような生命体。三人でようやく半人前に達するかと言わんばかりの作業量。  頭を抱えながら、定時きっかりまで働こうとすると、まだ十分に明るい時間に帰宅準備を始めている。見かけではわからないが、年齢や体力に問題があるかもしれない。やる気のない人間を働かせても邪魔になるだけ。諦め気分の俺が、一人で黙々と働きその日の予定作業を時刻ぴったりに終わらせると、懇親会をしませんか? と、居酒屋へのお誘いがある。
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