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第一章 代理人エリヤ・フォーソード
空に架かる虹の彼方まで旅してみたい。
俺は夢を思い出す。富と名誉と冒険心を求めて、ラジエルの地下迷宮に消えた両親が、微笑みながら手招きをする。小さな俺は、駆け寄ろうとして立ち止まる。
深呼吸をする。現実世界に引き戻された俺は、懐に身につけている瞬間移動のスクロール――両親の形見――を服の上から抑える。
俺は両親のように冒険者にはならない。なってはいけない。年老いた祖母と、まだ自立していない妹の面倒を見る必要がある。
だから働く。
――ノーデンス商会。
商会は冒険者だった前社長が傭兵稼業を始めたのが起源だそうだ。今では傭兵だけではなく、土木建設業も手がける王国でも名前が知られる大商会だ。とは言え、優遇されているのは親族や役職の連中だけ。朝から晩まで働き、安息日も出社する俺は、会社を代表する代理人の立場でありながらも、実際は子会社からの出向社員。使い捨ての駒だ。
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