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「駄目、ひー君駄目…。」
「ほら、凄く冷たくなってる。」
「んんあっ。」
悪戯に、彼の牙が私の指に突き立てられた。
痛いはずなのに。
赤く浮いた歯型と、滲む血は確かに私の痛覚を刺激しているはずなのに。
「やっ…気持ち良い…。」
「ふふっ、最近日鞠ってば、ますます敏感になったよね。」
彼に調教されきった身体は、それを快楽としてしか受け入れない。
「可愛い。」
噛み痕を濁すように流れた血液を、ひー君は舌で拭って微笑んでいる。
そんな私だけの唯一の彼の姿に、愛おしいという感情が込み上げた。
「誰がこんなに身体を冷やして良いなんて言ったの?」
「ごめんなさい。スリッパの場所が分からなくて…。ねぇ、ひー君、スリッパって何処にあるの?」
投げた質問をちゃんと聞いてくれたのか否か。回答を口にする事のないまま立ち上がった彼がいとも簡単に私の身体を抱き上げた。
宙に浮くような感覚に驚嘆の声を漏らして、慌ててひー君の首に腕を回す。
その私の動作を静観していた彼は、口角をゆるりと吊り上げた。
「秘密。スリッパの場所なんて永遠に知らなくて良いの。」
“だって、日鞠に生活の術を少しでも教えたら僕がお世話できなくなっちゃう”
耳元で囁かれた吐息混じりのその一言に火照りを覚えた刹那。
彼は寝室へと私を連れ戻した。
皺の寄ったシーツの上、ひー君はそこへ貼り付けるように私を組み敷いてすぐに唇を荒々しく塞いだ。
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