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僕は馬鹿だった。勉強嫌いで遅刻常習犯だった僕は、当然高校だって偏差値の低い私立学校に入学した。
僕の入学した高校は、学力の低い普通コースと学力の高い特進コースがあって、普通コースの生徒からは高い学費を巻き上げ、特進コースは低い学費で優遇体制をとるような学校だった。だから、ますます普通コースの馬鹿な生徒たちは劣等感からスレていくことが多かった。
僕がいたのは、そこだったのである。
高校に入学しても、親は僕にいつまでたっても変な期待を持っているし、学校の先生たちだって自分の業績に傷がつかないように、仕方なく僕に指導する。全部が馬鹿らしくてどうでもよくて、僕はいつもてきとうにテストを受け、てきとうな友達とつるんでいた。だから、彼女と関わりを持ったのは本当に偶然だった。彼女と僕は、たまたま同じクラスになり、たまたま近くの席になったのだ。
僕がいつもの通り、自分と似たような生き方を通しているクラスメイトと喋っているときのことだった。
「いや、あの女子もマジでふざけてるって。俺だって別に自分のことクズじゃねぇとか思ってねえけどさ。」
僕はそう言いながら、たまたま後ろに座っていた彼女に目を向けた。
「ね、永沢さんもそう思うでしょ?」
彼女はいきなり話しかけられて、少し驚いたようにこちらを向いた。普段は大人しいタイプの人だったから、僕は正直、彼女のことを馬鹿にしていた。
自分はクラスでそれなりの地位にいるけど、彼女はいわゆるジミーズの一員だと認識していたのだ。
だから、彼女に話しかけたのも一種のおふざけだった。
「別にそうは思わないけど。」
彼女は僕の質問にこう答えた。
『僕はクズではない』と、サラリと僕の発言を否定したのだ。
周囲の友達は永沢さんは優しいからサーと受け流していたが、それから僕はどうにも彼女のことが気になるようになった。
それから僕は度々彼女に話しかけるようになり、元々周囲に興味のなさそうな彼女も僕と自然と会話するようになった。
彼女はいつもサバサバとしていて、皆どこか自分に失望してあきらめている雰囲気の中で唯一と言っていいほどどこか芯の通ったものを持っていた。
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