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「十三、十四、十五」
「十五歳で働きに出たとよ…。近くにあった布ば作っちょった工場たいね。少しでも稼いで、親孝行ばせんばと思って」
「十六、十七」
「十七ん時に、親父が突然、満州に行くって言い出してな…。家ば人に売って、満州に渡った。船に揺られて、船酔いばして…きつかったばい」
満州に住んでいた事は聞いていた。
十七で満州に行った事は初耳だった。
「十八、十九…二十」
「満州の暮らしは優雅なモンやったな…。軍需工場で働いとったけれども、日本人はお給金も良かったしな…。今考えるとあの頃が一番良かったかもな…」
大婆ちゃんは噛み締める様にそう言った。
「日中戦争が始まって、満州の軍需工場は忙しくなった。あとから満州に来た日本人も、休む暇なしに働いてた…」
心なしか大婆ちゃんの声が沈んで聞こえた。
「そんまま日本は世界を相手に戦争を始めたんよ…」
「二十四、二十五、二十六」
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