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俺はゆっくりと歩を進める。
もう金毘羅さんも見えている。
手摺代わりに張られたロープを掴みながら俺は一歩一歩上がって行く。
いつも誰かのための人生を送って来た大婆ちゃん…。
それが痛いほど感じ取れた。
「七十二」
俺はそこでまた振り返る。
「この辺で俺が生まれたとよ…」
大婆ちゃんは俺を見て顔をくしゃくしゃにして笑う。
「お前が生まれた時は、初の曾孫でな…。嬉しかったなぁ…」
俺はそれを聞いてまた階段を上った。
その大婆ちゃんの笑顔には嘘偽りのない、本当の喜びの笑顔だった。
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