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「来たか、ラグビー部」
爺さんはそう言うと俺の肩を力いっぱい叩いた。
その音に婆さんは目を丸くしていた。
本家の爺さんに呼び出され、俺は久しぶりに帰郷した。
博多駅から更に二時間以上かかるこの町は、時間が止まっているかの様にも思える程、昔のままだった。
「大婆ちゃんがね、金毘羅参りしたかって言うとらすとよ…」
婆さんは俺の前にお茶を出しながらそう言った。
大婆ちゃんとはひい婆さんの事で、御年百を数える。
「金毘羅参り…。あの山の上のね」
俺は窓から見える金毘羅さんを見ながら訊いた。
「ばってん、大婆ちゃん登れんやろうもん…」
「だけんが、お前ば呼んだったい」
爺さんはニコニコしながらお茶菓子を手に取った。
「流石の俺も、大婆ちゃんば背負って、あん山ば登ったら次の日立てんやろうけんな」
そう言うと大声で笑う。
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