輝く、朝日の中で…

20/25
前へ
/25ページ
次へ
「お前たちが関西に行くって言うた時は寂しかったったい。ばってん、世の中は変わって行くけんね…。しょんなかったったい…」 俺は更に階段を上る。 「気が付くと百になっとったな…。人生ってのはそげん長いモンでもなかし、短いモンでもなか…。長い短いじゃなかとかもしれん。どんな人生ば送って来たか…。それが人生の価値なんじゃろうな…」 大婆ちゃんは後ろを振り返っていた。 「大爺ちゃんは早くに死なしたけど、それでん、満足のいった人生やったっちゃろうけんね…」 「九十…」 俺は息を吐いた。 「大爺ちゃん…。会った事はなかばってん。よか男やったっちゃろうね…」 大婆ちゃんは息を殺して笑った。 「雅人…。お前が一番大爺ちゃんに似とるったい…」 「俺が…」 それも初耳だった。 無論、大婆ちゃん記憶の中の大爺ちゃんの話になるのだろうが。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加