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「お前たちが関西に行くって言うた時は寂しかったったい。ばってん、世の中は変わって行くけんね…。しょんなかったったい…」
俺は更に階段を上る。
「気が付くと百になっとったな…。人生ってのはそげん長いモンでもなかし、短いモンでもなか…。長い短いじゃなかとかもしれん。どんな人生ば送って来たか…。それが人生の価値なんじゃろうな…」
大婆ちゃんは後ろを振り返っていた。
「大爺ちゃんは早くに死なしたけど、それでん、満足のいった人生やったっちゃろうけんね…」
「九十…」
俺は息を吐いた。
「大爺ちゃん…。会った事はなかばってん。よか男やったっちゃろうね…」
大婆ちゃんは息を殺して笑った。
「雅人…。お前が一番大爺ちゃんに似とるったい…」
「俺が…」
それも初耳だった。
無論、大婆ちゃん記憶の中の大爺ちゃんの話になるのだろうが。
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