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「九十一、九十二、九十三、九十四…」
大婆ちゃんを背負って百段の階段を上る。
楽ではないが、何故か心は晴れ晴れとしていた。
辺りは明るくなり、足元もしっかりと見える様になってきた。
「九十五」
俺はそこで立ち止まり、また振り返った。
漁に行く漁船がポンポンと音を立てて湾を出て行く。
「大婆ちゃん…」
「何ね…」
大婆ちゃんもその海を見ている様だった。
「今も永遠の命、欲しかね…」
「いらん…。今は立派に育ったお前たちを見てると、そんなモンいらんって気持ちになっとる…」
俺は頷いて、また階段を上る。
「九十六、九十七、九十八、九十九」
「オイは、気が付いたとよ…。永遠の命って言うとは、自分が生んだ命がまた命ば生んで、その子がまた命ば生んで…。そうやって引き継がれて行く命が、永遠の命って言うっちゃなかろうかって…」
大婆ちゃん…。
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