あなた、ラ?

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あなた、ラ?

 日が暮れる頃、仕事を終え駅のホームのベンチに座りスマホをいじりながら電車を待っていると右隣に若い女性が座ってきた。ちらりと横目をやると僕の顔を興味ありげに見つめている。僕を見ているんじゃなくて、僕越しに知り合いでも見つけたのかと思い、左を向いてみるが、誰もこちらを伺う様子はない。もう一度彼女の方を向く。にこにこしながらしっかりと僕を見ている。全然知らない人だ。この駅でも初めて見る人だ。さすがに声をかけないとまずい気がした。 「あのう、なんでしょうか」 「あなた、ラ?」  女性はいきなりこう切り出した。 「は?」 「あなた、ラ、ですか」 「なんですか…ラ?」 「はい。あなた、ラ、ですよね」 「だからラってなんですか」 「ラはラですよ」 「…ラリルレロのラですよね」 「はい、そのラです」 「いきなりラですかって、どういうことですか」 「だから、ラですよね」 「いやだからラってどういうことかって聞いてるんです。それがわからなければ、ラかどうかもわからないじゃないですか。そもそもそういうあなたはラなんですか」 「私、なんに見えます?」     
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