あなた、ラ?

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「なんに見えます? なんにって職業とかそういうことですか。だったら就活中の女子大生に見えますね。いや、秘書とか受付嬢とかかな。すごくおきれいですし背も高いですし。もしかしてモデルさんとかかな」 「そんなことは聞いてません。五十音でいうと、私、なにに見えますか?」 「五十音?」  目を爛々とさせながら女性が矢継ぎ早に聞いてくるので、こちらも負けじと応戦した。しかし、ここで僕は一旦発言を止めた。五十音でいうと、私なにに見えますか? 質問の意味も意図も全くわからない。もしかして、若い人の間でこういうのが流行っているのだろうか。けして若いとはいえない年齢の僕は、年のわりにSNSやらネットニュースやらでいわゆるバズった出来事なんかはチェックしてる方だと自負していたが、このゲームは初めて知った。「五十音ゲーム」でググりたい衝動を抑えつつ、僕は彼女の顔を見て、彼女にふさわしい五十音を探した。 「そうですね、じゃあ、ミで」  え、と女性は小さく声を発した。口を抑え、驚愕している。さっきまでの期待に満ちた顔は消え、この人何言ってるの? とでも言いたげだ。僕はどうやら間違えたボタンを押してしまったようだ。いや、美人に話しかけられたからといって、調子に乗ってよくわからないまま話を合わせてしまったのが間違いだ。そもそも相手にしたのが運の尽きだ。     
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