作者は主人公じゃない(保険)

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今日は仕事がある。 雰囲気の良いレストランで、右手にナイフを左手にフォークを持って、目の前の男――すなわち、依頼人と取引をしている。 「……本当に、殺ってくれるんだろうな? 100当番」 少し白髪の目立つ、黒塗りスーツの男は、口を震わせながら、俺に尋ねた。 震わせている理由は、殺人に手を染めたやつが目の前にいるからか、殺そうとする決意が定まっていないからか、もしくは俺のサングラスとマスクと黒塗りスーツいう不気味な姿に恐れているかどれかだ。 「ああ。もちろん、ちゃんとした動機があるならな」 わざわざ動機もないのにこんなところに連絡をしてくるバカもいないが。まあ、決まり文句だ。100当番は金と相手を殺したいという強い動機で動く。 「そりゃあもちろん。やつは、私の娘を殺したんだ。居眠り運転で。理不尽な殺され方をしたってのに、あいつはなんで無期懲役なんだ。今すぐにでもあの世に送ってやりたいよ」 動機について聞いたが、仮にどんなことを言われても、否定をするつもりはない。俺の仕事は、依頼人の正義を代わりに執行することだ。 「そいつは災難だったな……いいだろう。依頼を受けよう」 「本当か……!」 じいさんは顔を上げない。しかし声の抑揚が上がっていた。 「ああ。だから、その相手のことについて聞かせてもらいたい」 簡単にその殺人鬼についてまとめると、「判決は下されたが、事故で怪我を負ったため、今は病院にいる」とか「警察と病院側で、身内以外の見舞いは認めていない」とか「今あいつは足が悪いから殺すのは簡単だろう」とか「警察が部屋の前を見張っている」とか、そんなところだった。 「いい結果を期待してくれ」とだけ言うと、じいさんは前金を置いて席を立った。
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