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私たちは逼塞していた。
共和国のありとあらゆる汚物と悲哀と貧困を掃き寄せたような、首府東地区のスラム街の集合住宅、その屋根裏部屋。その狭いたった一間だけの「家」で、14歳の私は、日中は病気で寝たきりの兄の世話をし、夜は酒場で給仕の仕事をして糊口を凌いでいた。
私が8歳になった頃、兄は軍隊に入った。折から魔族たちが「最終戦争」を唱えて、国境線へ大挙押しかけていた。
兵営へ面会に行った時、兄はニッコリと笑って言った。
「貰った給料で、お前を学校に行かせてやるからな」
兄は純粋だったし、私も幼かった。このまま順調に人生の行方が定まって、二人の前途は善きもので溢れているだろうと信じていた。
次に会った時の兄は見る影もなかった。病院の寝台に横たわる姿を見て、茫然と立ち尽くしたのを覚えている。
傍にいた看護卒は「四肢が満足なだけまだマシだ」と、慰めにもならないことを私に言った。
傷痍軍人恩給はなぜか支給されなかった。私たちはたちまち困窮した。
流れに流れて、私たちはこのインスラの最上部に漂着した。陰気と悲哀と無気力を建材にした、監獄のようなこの一室に。
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