美談と呼ぶには、それはあまりにも悲惨な

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 明け方、私は仕事を終え、体を引き摺るようにして階を上がり、屋根裏に通じる梯子の下に辿り着いた。  ヴァレンティーヌが、モップを持って床を掃除している。 「おはよう姉さん。どうしたの、床掃除なんてして? 誰の得にもならないのに」  彼女は私を見ると、なぜか一瞬息を呑んだようだった。 「おはようエリザ。なんだか今日は気分が良いのよ。お掃除したい気持ちになっちゃって」 「姉さん、余計な体力を使うと悪い病気になるよ」  私は返事も聞かず、溜息をついて、梯子を上った。ヴァレンティーヌは、黙々とモップを動かしていた。
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