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「どうしたのミコちゃん。ぼーっとして」
鳥海に指摘されるまで気づかなくて、はっとして箸に挟んでいただし巻き卵を皿に落としそうになった。
「放っておけよ鳥海さん。そいつ恋煩いだから」
「恋煩いー!?」
そしてまた新聞を読みながら祐嗣が誤解を招くことを口にするものだから、鳥海は味噌汁を噴いていた。
これはもう今後当分の間このネタでいじられるのだろう。尊はじろりと祐嗣を睨みつけた。
「違うから。男に恋なんてしないから」
「初恋の君が王子様に成長して、華やかな社交界のパーティで大勢の美女をかき分け、『僕と踊ってくれませんか』と申し出てきたんだと」
「初恋の王子様!?」
だから違う。何もかも違う。
「鳥海さんが誤解するから本気でやめて。何で政治家の献金パーティで踊るんだよ? 意味わかんない」
「ものの譬えだ。初恋の男に再会して口説かれてぽーっとしてるのは事実だろうが」
「してない。それに初恋初恋って、そもそもそこから違うから。子供のころからの知り合いというか…」
「ミコちゃん、昔の知り合いと偶然再会したの? それが王子様みたいなやつってこと?」
「そうです。そこは合ってます」
「星名光太郎の息子秘書だと。ほら、あの『ユキくん』だよ」
そこまで説明を付けられて鳥海はやっと合点がいったようで、ああ! と納得していた。
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