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「あーぼんやりとね。何か入学後も半年くらい信じてもらえてなかった気がする」
「東大入るようなボンボンがこんな薄汚ねえ店でバーテンのバイトやると思わねえからな」
「あ、先入観ね。何だ、俺が低学歴っつーか馬鹿に見えるのかと思った」
「おいおい高卒で低学歴か? 俺なんか高校中退だから中卒だぜ」
堂々と低学歴を威張る久保に苦笑が漏れる。
「マスターは学歴なくても賢いじゃん。客相手にそんだけ喋れれば立派」
「はは。おまえにお墨付きもらうと俺も鼻が高けえよ。で、そんだけ大そうな肩書持っておきながらまだ落ち着かねえのか? そろそろ所帯持ってもいい歳だろ」
「あーそうだね。ていうかマスターって結婚してたっけ?」
「俺か? この歳だから流石にな」
と言う割に昔から所帯じみていない。見た目が若く、渋さもあいまってまだ女にもモテるだろう。
「ふーん。若い時散々遊んで、歳取ればそこそこの相手で手打って結婚しちゃうってとこ?」
「そういうやつも多いだろうな。俺の場合はまあ、店が軌道に乗ったらと思って、それまで向こうに待ってもらったってとこだ」
「へえ、そうだったんだ。奥さんと今も円満?」
「ほどほどだな。おまえは? 女いねえのか?」
「どう思う?」
「いるな」
そこで即答されたので意外だった。
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