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「もう宝来くんと接触した?」
「いいえ。示談交渉はまだです。遠目に見た印象ですよ」
「違うよね。既に周辺に調査をかけてる。彼の半生、交友関係、職場での評価などすべて」
「いえいえ、そこまでは流石に。だって事件からまだ二日しか経っていないんですよ。調査をかけるにしたって時間が足りない」
黒羽は苦笑したが、目の動きで読んだ。調査は既にかけている。おそらくまだおおまかな情報しか手に入っていないと見た。宝来の身元を調べるのは簡単だ。まず父親の事件にすぐ行き当たるから。一般人よりずっと情報が得やすい。
「しかし、綺麗な人ですね。宝来さん」
だがそこで黒羽は思いもしないことを言い出した。
綺麗?
宝来の話題なら、普通そこで亡父の宝来議員について、もしくは国税査察部について触れるだろうと思っていた。
それが、そんな大きな話題をすっ飛ばしていきなり容姿を褒めるとは思わなかった。
まさかこいつ、ゲイか?
いや違う。そうじゃない。
怪しんでいるのだろう。水落と宝来の仲を。
友人同士なんかじゃなく、恋人かそれに類した関係だろうと。
つまり、鎌をかけられている。
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