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宝来の性格は元々把握していた。だから法廷で争うことが嫌だろうという予測もついている。
でもそういうことではなくて。
彼を不快にさせたくない、困らせたくない、という気持ちが日に日に増している。
今回の事件が決定打だ。
水落の存在が明らかに宝来にとってトラブルメーカーであり、諸悪の根源であり、不利益な存在と化している。
それが心苦しい。不甲斐ない自分にも腹が立つ。
今回の裁判でも宝来に我慢をさせることは可能だろう。勝つためには、負けないためには、ちょっとくらいこちらを攻撃されても耐えてほしい、と。
でも、待ってくれ。
そもそも何のためにこの裁判をする?
宝来が襲撃されたからだろう?
水落のために彼が犠牲になったからだろう?
むしろ、守ってやるべき存在を労わり、外敵から身を挺してでも庇ってやるのが自分の役目じゃないのか?
傷ついた宝来に対し、これ以上苦痛を、負担を強いる気か?
「確かに、俺はへっちゃらだね。だけど宝来くんは不快だと思うかもしれない」
「そうでしょう。そこまでして裁判に勝つ意味はありますか? 求刑に近い判決が出ました。執行猶予がつかず実刑になりました。懲役を一年二年増やしました。で? それが一体何? となりません? そちらの生活に大きな影響ってあります?」
ないね。日常生活に何ら影響はない。つまりただの自己満足。
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