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「宝来さんは軽傷といえど怪我を負いました。それは土井本が姑息で、卑怯で、小心者で、親のすねかじりで生きてきて、プライドだけは高い腐った人間だからです。同情の余地もありません。弁護する立場ですが、正直クズだと思いますよ」 「……」 「そんなクズのためにたびたび裁判に呼ばれ、貴重な時間を費やして、言われたくもない話題をされて、触れてほしくない部分まで挙げ連ねられて、一体何の得がありますか? 刑を重くして、それで土井本を心から反省させることって可能ですか? ま、正直無理でしょうね。金持ちで権力者の親に甘え放題で育てられた軟弱な根性じゃ、そうそう真っ当な人間に矯正なんてされません。そんなやつにどれだけ重い刑罰を与えても無駄。関わるだけ時間がもったいない」 「……」 「水落さん。検事のあなたからしたら弁護士って金儲けに必死だな、プライドのかけらもない仕事だって馬鹿にしてますよね? まったくその通りですよ。私も同意見。金と権力を持っただけの悪人を守ってやる仕事なんて、誰がするっていうんです? 金がないと誰も庇いませんよ、あんな強欲な豚たちを」 「……」 「でもそんな豚たちと長期間関わらずに、金で割り切ってさっさと終わらせましょうよっていう真の平和を提供できるのも弁護士なんですよ。罪を追及して被疑者を追い詰める検事側には成し得ない仕事。だからプライドのない仕事でも存在意義ってあるんです」 「……」
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