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「お互い恨みを買いやすい仕事で大変ですね。だから私は今回の事件だって、共感するのは土井本じゃなく、あなただ。検事の仕事はやったことないので内情は知りません。すみません。知った気で言うなって思われるのも嫌なのでそれについては何もコメントしません。でもね、悪人や罪、それに関わる不幸な人たちと向き合うっていうきつい仕事は共通してますから。お互い報復に遭う危険にさらされている。私だっていつ刺されるかわかったもんじゃない。だから勝手に共感するってだけの話です。言うなれば立場は違えども同志ですから」 「……」 「同志で揉めたくないじゃないですか。私の個人的な考えですけどね。宝来さんとも一度ご相談ください。私が勝手に彼に接触することは一切ありません。水落さんから許可をもらわない限り、隠れてこそこそと呼び出すこともしませんからご安心ください。示談は一朝一夕には行きませんから、早急に返事を出せと急かすつもりも毛頭ありません。ごゆっくりとどうぞ。そしてその上でまた次回、相談させてもらえませんか」  そこまで告げると、黒羽は微笑んだ。  わかった。なるほど。  こういうやり方で示談にまで持ち込んでんのね。
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