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 宝来への被害がなくなる。それが最も願うこと。  彼を不幸にしたくない。死なせたくない。  それくらいなら自分が死ぬほど苦しい思いをしたほうがずっとましだ。  そう思って身を引こうとした。  でもできなかった。  彼が引き留めてくれたから。それはある。  だけど、どうしても言えなかった。  『別れよう』という言葉が言えなかった。言いたくなかった。絶対に嫌だ。彼を失いたくない。自分勝手でも何て思われてもいい。それだけはできない。やっぱりそれは違うと思った。  まだ自分にはやれることがあると思った。  まだ自分にはやっていないことがあると気づいた。  これほどの強い愛情がある自分なら、やれるはずだ。  そうやって生きてきたじゃないか。今までだって、絶対に諦めないと思って生きてきた。そんな自分を捨てられない。どうしても変えられないものがある。自分の核を変える必要はない。  変えようとしなくても変えられる時は否応なくやってきて、変わる。  だから焦らなくていい。  その時も彼はちゃんと傍にいてくれて、受け入れてくれて、やわらかい光で包んでくれる。  眩しいと思っていた光に目が慣れ、やがてそう感じなくなるように、いつか目を逸らさないでいられる日がくる。  その日がくると信じたいんだよ。
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