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『ご存じでしょうが、亡父と関係のあった方が各界におりまして、今回たまたま協力的な働きを見せてくれただけです』 『しかし君が窮地に立たされたら大物が動くということは紛れもない事実だろう』 『どうですかね。今回はたまたま向田議員のパーティが発端となったため、その周辺を巻き込んだだけでしょう。常から私に力添えをしてくれているわけではありませんから』 『つまり、特捜部の検事という立場を利用した癒着があるわけではない、ということだね?』 『ええ当然。政治家先生たちに捜査上の便宜を図っているわけではありません。ま、所詮役職のない平ですからそんな権限もありませんしね』  事実を淡々と答える水落の様子を柳井はじっと観察するように、デスクで手を組んだまま見据えていた。 『水落くん、私は君に期待している』  そこでいきなり持ち上げられたので、流石に警戒して彼の反応を窺った。 『人脈の話のみならず、君は特捜部で過去にない実績を叩き出している。一部批判的な意見もあることは知っているよ。だが結局、世の中は成果主義だ。今回の事件は少々荒いことをやってきたツケが回ったのだろうと邪推する者もいるようだが、それもこれも君が仕事熱心だったからこそだと私は評価している。恨まれてなんぼ、なんてことは思わないよ』
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