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『水落くん、君は私怨により被害を受けたのではない。「検事として報復された」のだ』
『……』
『ひいては、犯人は検察庁を襲撃したものと同等とみなす』
『……』
『我々は同胞が報復に遭ったから敵討ちをする、という意味で見ていない。君は「検察の代表として攻撃された被害者」だ。君ではなく他の者がターゲットになる可能性もあった。だから私は東京地検のトップとして申し訳ないという気持ちがある』
どこまで本音で言っているかわかったものではないが、私怨のため攻撃を受けて自業自得だ、という説教をしたいのではないらしい。
おそらく、地検の代表として部下の不幸を見舞うくらいの気持ちで労ってくれている。
『今後いつまた報復に遭うかわからない身分だが、それでも君は今後も特捜部に身を置き、職務に邁進してくれるかね』
『ええ。当然です』
はっきりと明言すると柳井は笑顔を見せた。
『こういう事件があると「所属を変えてほしい」と申し出てくる者が多いが、君はそういう気はなさそうだな』
『特捜部に入るために検事になったので。仮に自分が重傷を負ったとしても、所属を変えてほしいっていうのはありえませんね』
揺るぎない意思を感じ取った柳井は、そうか、と頷き、納得してくれたように見えた。
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