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『被害者となった君は今後検察内での立場も悪いようにはならないだろう。まあ元々優秀であるから黙っていても昇り詰めていく人間だろうがね』
ふーん。報復の被害に遭ったから今後の地位も優遇してくれるってわけ? 別にそんなのいらないんだけど。
それにさ、検事だから報復されたとは思ってないよ。俺が人に恨まれる言動してきただけだから。被害者ヅラするつもりもない。
今回の被害者は彼のほうだから。もし優遇するなら彼にしてよ。
『いえ、今回の事件を利用してのし上がろうなんていう気はさらさらありません』
『君ならそう言うと思ったよ。まだ若いからすぐに出世という話じゃない。だがいずれ君が幹部として引き上げられる日はそう遠くないだろう。とにかく君が大事に至らず幸いした。今後の活躍を大いに期待している』
柳井からは力の籠もった言葉がかけられた。
これが重圧。なるほどね。志賀が言っていた。確かに逃げたいね。ますます重荷だよ。
それが嫌なら仕事に命かけなきゃいいのに。適当に成果挙げておけばそれで済むのに。
そうしないのは、堕ちることが怖いから。
強迫観念。そうだね、その通り。
「俺が報復受けたからって将来優遇するとか言われても。被害受けたのは俺じゃなくて宝来くんだしさ」
泡風呂の中でぼやくと、星名も同調してくる。
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