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「そうだね。軽い傷で済んだようだから良かったけど、無関係の彼からしたらただのとばっちりだからね」
「星くんはさ、俺の立場だったら宝来くんにどうやって償う?」
その問いかけに、星名は一旦手を止めて自らについた泡をシャワーで洗い流した。
「うーん…。そうだね、償うとなると正直難しいかな。金品を受け取らないっていうなら、謝罪して、今後彼に迷惑をかけないように努力するくらいしかできない」
やはりそのくらいしかしようがないのか。金銭などで解決しない場合、結局誠意という形で相手に尽くすことしかできない。
「それだけじゃ俺の気が済まないっていうかさ」
「水落の気持ちはわかるよ。でも宝来くんの気持ちも考えなきゃ。そこまで気を遣われたら逆に心苦しいとか、水落との付き合いが難しくなるんじゃないかな」
宝来の気持ちを考えろ、と言われたらぐさぐさくる。
確かに、償いたいとか気が済まないというのは、ただの水落の自分本位の欲求に過ぎない。
宝来の求めていることとは違う。
「僕が宝来くんなら、しょげ続ける水落を見るほうがつらい。もう終わったことは気にせずにいてほしいと願うはずだよ」
やはり星名は仏のように心が広い。道徳や倫理の教科書に出てくるような模範解答を前にすると、腐りきった心を持つ者としてはぐうの音も出ない。
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