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「そうだね。俺のほうが見た目に反して脆いんだろうなあ」
ぼやくと星名は苦笑を零した。
「いや、水落も充分強いよ。それで弱いっていうならほとんどの人間はどうなるの」
「まあね。でも強い強いと自己過信し過ぎちゃってんのかなあとは思うよ。気づかされたっつうか」
「誰によって気づかされたの?」
そこでめずらしく意地悪い質問が降ってきてぎょっとする。
いや、星名はそんなことはしないから、水落が過剰に反応しているだけだ。ただの追及なのに宝来との関係を勘繰るものではないかと疑ってしまっただけ。
「好きな人に」
「こないだ言っていた恋人のことだね。そこまで水落に影響力を与えられる人なら一度見てみたいな」
もう見てるけどね。まあ気づいていないならそれでいい。
「俺の話よりさ、星くんは自分に影響を与える人を探したいって思わねえの?」
「影響を与える人を自ら探すってなると…。あ」
そこでトリートメント剤か何かを手に取りだした星名は思い出したように動きを止めた。そして水落をじっと見つめてくる。
「そうだ。言うのを忘れてたよ。僕もあのパーティで偶然再会したんだ」
「偶然再会? 誰に?」
「例の日本人形の子」
え?
驚いて瞼を下ろしていた眼を開け、がばっと起き上がった。水飛沫が空中を舞う。
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