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「風習のせいでややこしかったですよね…すみません」 「はは。君のせいじゃないし、それにとても似合っていたよ。可愛かった」  可愛…。  駄目だそれは。可愛かったは駄目だ。  子供の時の話だとわかっているのに、どんどん顔面が熱くなる。  ガマガエルやエロジジイなら気持ち悪い言葉が、星名が言うと気恥ずかしさしか生まない。  動揺していると悟られたくないのに、これではいつ気づかれてもおかしくない。 「君のお母さんが神道に熱心だったからだよね。今も元気にしている?」  そしてその何気ない質問により、星名は当時の事情をまったく知らないのだとわかった。  彼の母親は多少なりとも知っているはずだが。やはり子供に離婚だのDVだのといった話がしづらかったのだろうか。言う必要がない情報を敢えて説明する意味もないか。 「母とはずっと会っていないのでわかりません」 「会っていない?」 「両親の離婚によって僕ら家族は引っ越したんです。父の暴力から逃げるためにバラバラで暮らそうと言われて、僕は今の山井弁護士事務所の所長夫婦に預けられました。結局そのまま母とは再会できないまま、今に至ります」  そこまで告げると、その回答は思いもしないものだったようで、星名が息を呑んだのがわかった。
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