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 それはつまり当時のような、兄弟のような関係になりたいということだろうか。  確かにそれは友人関係とは違う気がする。かといって実の兄弟ではないから、一体どういう関係になるのだろう。  カテゴリーにはめずに、と言われたけれど、はめないとこちらもどう振る舞っていいのかわからない。 「もちろん、君がしたくないというものを無理強いしたくはないよ。逆に尊くんはどうしたい?」 「僕は…」  どうしたいか。どうなりたいか。星名とこれからどういう関係になりたいか。 「そうですね。僕も…昔みたいな関係になりたいです」  友達や兄弟になりたいわけではなく、当時の関係はとても居心地が良かったから、そう答えた。  どうなりたいかという答えは鳥海に訊かれた時同様、思いつかないままだったから。 「本当に? 嬉しいな。僕の一方通行じゃなくて良かった」  尊の答えに星名が喜んでくれてほっとする。  とにかく、彼がこれからも長く尊と親しくしていきたい、という意志を確信できたのでそれはとても嬉しかった。昔話に花を咲かせて満足したらさよなら、で終わらないで良かった。  いや、星名はそんな人ではないとわかっていた。  誠実な人だ。優しくて鷹揚で器の大きい理想の男性だ。  こんな人になりたかった。  子供の時からそう思って憧れていたのだと思う。  その憧れの人と偶然再会できて、こうして再びあの突如失った幸福な日々の続きを取り戻すかのように、また関係を結び直そうとしている。  不思議だ。これが人の縁というものだろうか。  神様は尊を星名に導いてくれたのだろうか。  だったら、こんなに嬉しいことはないのに。
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