ぼっち

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ぼっち

 温かい。  ずっと夢見てたんだ。キミとの恋人繋ぎ。  絡まった左手から響く、優しい心音。  キミは少し頬を赤らめながら、おんなじ歩幅で隣、歩いている。  ここは横浜、みなとみらい。蒼い夜空に観覧車が映る。 『大好きだよ』  ああ、大好きなキミの耳元でそう囁きたい。黒いロングヘアが、海風に揺られてキミの耳をさらさら撫でている。その髪をふわりとかき上げて、そう囁きたい。ぎゅっ、て心臓が締め付けられる。  むろん囁こうと思えば、そんなことは簡単にできるんだけど。  でも、しないんだ。そう決めているんだ。 「ねえ、誠也くん」  キミはそう言う。 『僕は、誠也じゃなくて、明だよ』  ああ、そう言ってキミを驚かせたい。誠也と呼ばれるのは、辛いんだ。キミは僕が明だということを知ったら、どんな顔をするだろう。悲しい顔はしないに違いない…きっとぱあっと顔を明るくして、昔のように僕の名前を呼んで、明くん!?なんつって抱き付いてきたりするだろうか。  まあ、むろん言おうと思えば、そんなことは簡単にできるんだけど。でも、言わないんだ。歯がゆい気持ちは抑えて。 「うん、何、理紗」  僕は誠也を装ってそう訊き返す。 「観覧車、乗ろうよ」     
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