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「明くんの姿、ちゃんと見えるよ」
「僕も、理紗の姿、ちゃんと見える」
「ほんとによかった…これからはずっと二人一緒だよ」
キミはそんなくさいセリフを言ってにっこり笑い、
「これから一緒に、桃源郷目指そうね」
と囁いた。
観覧車は乗り場に帰ってきて、扉が開いた。
「あれっ、一人?しかも寝てる」
スタッフさんがびっくりした様子で中を覗き込んできた。僕らはとっとっと、とその人の隣から出た。
僕はスタッフさんのその様子を見てふと、気づいた。
「じゃあひょっとして僕は今日、誠也の身体で一人でいろいろしてたってこと?」
「はたから見たら、ぼっちだっただろうね~」
キミは屈託なく笑った。
「ひゃー、恥ずかしい!」
僕はおどけて見せた。
二人で顔を見合わせて、なんだか可笑しくなってけらけらと笑った。
それから、そっと左手をキミの右手に絡めた。キミはぽっと顔を赤らめて、指を重ねた。
心音はもう失われてしまったけれど、その手は温かかった。
二人だけの横浜の夜。
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