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「今日の待ち合わせの時、カバンに右手を、ポケットに左手を入れて待ってたでしょう?あれ、明くんが生きてた頃の癖だったよ」
…そんなこと。
「だけど気づかないふりしてた、してたんだけど、キスしてたら、ああ、やっぱり明くんだってなって…」
キミはそう言ってまた潤んだ。なんとなく今日のデート中ずっとからかわれてたんじゃないかって気分になったけど、でも目の前で邂逅にうれし泣きするキミを見てそんな考えは吹っ飛んでしまった。ただただ、愛しかった。
観覧車はちょうど一番上を周ったところだった。ランドマークタワーが僕らを優しく見守っている。
「うれしい」
キミは袖で涙をぬぐいながら言った。
「あのね、言い出しにくいことなんだけど、実は私、この前、死んだの」
キミは唐突にそう言って悲しげにまた笑う。
背筋がぞくっと。数秒間、思考停止。
…えっ?
どう、いうこと?
死んだ?
「なんかさあ、誠也くん、変に嫉妬しちゃったみたいで…」
え、嘘だろ…。
「だから、明くん、もう誠也くんの身体、棄てちゃっていいよ」
キミはちょっと切なそうだったけど。
「お互い、見えるはずだから」
ああそうか。
僕は少し考えて、誠也の身体を離れた。誠也の身体は自律を失い観覧車の椅子の上にガクッと倒れこんだ。意識はない状態だ。
「ほんとうだ」
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