8 転機

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「フーガ様、これからどうされるおつもりですか?」 話を切り出したのはリースベットであった。 オレが見てきた感じでは、近衛の中でもアリシアに最も近い女性エルフである。 ここは宮殿内の一室。 近衛のエルフ達に案内されたオレたちは会議室のような場所にいた。 「どう…とは?」 「人間との戦いです。 将軍であるヘルムートを討ち取ったのですから、王国側が態勢を整えてこちらへ侵攻してくるのは時間の問題かと…」 え? それって戦争ってこと? ひょっとして…なんか…えらいことになってもうてる? 「王国? ここって平和な島なんちゃうん? 国なんてあるん?」 「はい。 このレイリア島は、一応は人間の国であり、リフィス王国という名称になっています」 よくよく話を聞いてみると、この島の歴史はこうである。 モンスターや動物などを含め、ほとんどの種族は大陸で暮らしている。 アリシアの話にもあったように、それぞれの国が同盟や休戦等を締結して均衡を保っているようではあるが、基本的に大陸は戦乱の地である。 そこで、生来、種族としての戦闘力が低い人間の一部は大陸を離れ、新天地を目指し海に出たのだ。 そして、流れ着いたのがこの島であり、彼らはここに王国を誕生させたのである。 「なぁ、マスター。 なんか、つまらなさそうな話だから俺様は寝るわ」 「ん? まぁ、おまえにとっては、おもんない話かもしれんし、ええで」 ケンケンはオレが座っている椅子にもたれかかって?寝てしまった。 「ねぇ、お姉ちゃん。 じゃあ、エミってどうしてココにいるの?」 相変わらず人見知り全開のエミが楓香に尋ねる。 まぁ、さすがにこの雰囲気で、まだ子供のエミがリースベットに直接聞くのはさすがに無理があるか…。 …でも確かにエミの言う通り、なんで人間の国に獣人がいるんやろ? そもそも、アリシアもこの島に亡命してきたって言ってたけど、よう人間がエルフを受け入れたよな? 「お嬢ちゃんはいつからこの島にいるの?」 おそらく気を遣ってくれたのであろう。 近い将来訪れるであろう戦争の話をしている最中だが、リースベットはエミの言葉にも耳を傾け優しく問いかける。 「…わからない…。 でも…ほんとに小さい時から…」 「そう…。 …おそらく…王国の実験体として大陸から輸入された可能性が高いですね…」 ━バンッ━ 「実験体とか、輸入とか! 笑美ちゃんはモノじゃないんだよ!」 楓香は机を両手で叩き立ち上がった。 妹がこんなにも怒っている姿はオレの記憶にない。 「…そういうつもりで言ったのでは無かったのですが… 申し訳ございません…」 「…あ…こちらこそごめんなさい…。 その…なんだか腹が立ってしまって…。 本当にごめんなさい…」 リースベットは心から謝っているようにオレには思えた。 エミへの接し方を見れば、彼女がエミをモノとして考え扱っているとはとても思えない。 そして、妹もそれはわかってはいたと思うが、突発的に抑えきれない怒りが込み上げてきて爆発してしまったようだ。 なんか微妙に気まずい雰囲気になったんやけど…。 てか、そもそも全部王国のせいやろ! …にしても、なんか王国ってなんか闇が深そうやな…。
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