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…うそやろ…?
衝撃波が治まり後ろを振り返ると、街の方から大きな黒い煙が上がっていた。
オレは鎧を装着した状態、楓香も防御魔法を展開していたので、二人とも怪我などは何もなく無事であった。
「まさかとは思うけど、あれって、さっきの楓香の魔法とか?」
「…そ…そうだね…。
街の中心に来たら爆発するところまではイメージしてたんだけど…。
まさか、そこからこんな事になるなんて思ってもみなかったよ…」
魔法使い超怖ぇ~。
確かに、魔法でバーンって感じで、敵を倒すってなりゃあ、楽っちゃあ楽なんやけど、ちょっと引くわ…。
オレたちはリベラの状況を確認するために再び丘を上り、街を見下ろす。
足元には、つい先程までは普通に生えていた木々が全て爆風で薙ぎ倒されていた。
「あ~あ~。
あの感じやったら生存者なんておらんやろうな」
城壁は崩れ去り、かろうじてその名残が残っている程度だ。
そして、ほとんどの建物が全壊しており、瓦礫の山となっている。
火種が燻っているのか?あちらこちらから小さな煙が上がっており、また、火事になっている場所からは大きな黒煙が上がっていた。
オレは街の中心部に目をやった。
その場所には立派な城があったのだが、今はその面影が全く無い。
そこには大きなクレーターできていて、魔法の威力の凄まじさを物語っていた。
「そうだね。
でも、とりあえず目的は達成できたって感じだね」
薄々は感じていたのだが、オレは人間を殺すことに対しての罪悪感がほとんどない。
そして、常にオレと一緒に行動している楓香。
彼女の様子を見ていると、彼女もまたオレと同様であると思っていいだろう。
感覚的なものなので、個人差があるとは思うが、例えて言うのであれば、今のオレにとって、この世界の人間はアリのような感じである。
普段であれば無駄な殺生は好まないが、それらが家に上がり込んできた時には躊躇なく殺虫スプレーなどで殺す。
そして、そこに罪悪感はない。
それは、この世界に於いてオレたちは魔人という種族であり、本能的に備わっているものだからなのか?
廃墟と化した街を見下ろしながら、オレはそんなことを思う。
だが、それもほんの僅かな時間だけであった。
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