12 計画

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時刻は13時を過ぎていた。 ガウィンディを出発し、西に向かっていたオレたちは、もうお馴染みになりかけている分かれ道に到着する。 以前この場所で検問を行っていた人間の死体やテントは誰かに焼かれてしまったようだ。 何かを燃やしたような焼け跡だけが残っている。 実は、これはアルベルティーナが放った斥候のエルフが気を利かしてやったことだそうだ。 ヘルムートがガウィンディに侵攻してきた際、オレはヤツらを討ち取った。 そして、その後始末を行ったのがエルフの兵たちである。 ケンケンを使って斬り落とした死体の断面は、鎧を装着しているにも関わらずあまりにも鮮やかであったという。 その事はエルフ兵の知るところとなり、もちろんリベラに向かった斥候も知っていた。 この場に放置されていた死体を確認した彼らは、その切断面から、オレが奴らを葬ったと断定。 そして、この件に於いて、エルフやオレが関与した事が公にならないよう証拠隠滅の為に火を放ったというわけだ。 「お兄さん…やっぱり何か嫌な感じがする…。 気をつけてね…」 馬車を降りて休憩をしていると、エミがオレに近寄ってきて小さな声でそう告げた。 オレたちが最初の村から離れ、初めてこの十字路に差し掛かった際、どの道に進むべきか?を考えていた時にも、彼女は同じようなことを言っていたように思う。 具体的に何が嫌な感じなのか?というのは彼女自身も全くわかっておらず、本当にただの直感らしいのだが、オレは一応それを心に留めておくにした。 オレたちが向かおうとしている島の西側にはドワーフが住んでいる町がある。 そして、南には首都であったリベラがあり、北には大陸との唯一の接点である港町があるそうだ。 この島に於いて、これだけの交通の要所である場所は他にないと思うのだが、ここには町や村が存在していない。 アリシアが言うには、この十字路は広大な草原のど真ん中に位置するそうで、例えば、今回のように物流が機能しなくなった時のことを想定しているのだという。 まぁ確かに、こんな場所にぽつんと町とか村なんか作っても、飲み水も確保できへんし、森とかも近くにあらへんから食べるモンにも困ってまうよな…。 それこそ、今みたいに他んトコからの流れて来る物資が途切れてもうたら終わってまうもんな。 基本的にこのレイリア島に存在する大きな町は、比較的容易に水を確保できる場所に存在する。 そして、それらの町の周辺には、不測の事態に備えて衛星のように村が存在しているそうだ。 エルフの町のように、森の中に町や村を作ってしまえば、水や食料の確保ができるのでは?と一瞬考えたのだが、そういった場所にはモンスターが出没する。 ヤツらも生きていく上で、最低限の水は必要であり、脆弱な人間が暮らしていくには厳しい環境なのだ。 そう考えると、ガウィンディは、森にも詳しく魔法や弓を扱えるエルフという種族だからこそ作り上げることができた町なのだと改めて感じた。 昼食をとり、休憩を終えたオレたちは、分かれ道を出発し西へと向かった。
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