2139人が本棚に入れています
本棚に追加
/883ページ
「お~い!
そろそろ出発するぞ~」
時刻は16時を過ぎていた。
今まで通ってきた町や村で得た情報通りなら、次の村に着くのは18時頃になるだろう。
「は~い!」
とりあえずは楓香たちを着替えさせる。
荷台の中には、数日は生きていけるだけの非常食や水だけではなく、オレたちの衣類も積んでいる。
と言っても、ローズにはメイド服があるが、彼女以外は、普段着ている服は1着ずつしか持っていないので、今着替えているのは寝巻きである。
余談かもしれないが、オレに関しては、これから皇帝になろうというのに、寝巻き以外には、未だに初期装備的な布の服しか持っていない…。
この世界に来てから、宮殿などで過ごす事が多いのだが、基本的に私物は荷馬車に置いている。
私物と言っても、今のところは服や下着くらいであり、あとは、ガウィンディの宮殿でもらったタオルや寝巻き、櫛や鏡といったような物しかない。
「で、今日は何の用やねん?」
楓香とエミが荷台の中で着替えている間、オレは魔神に問いかけた。
ちなみにだが、神様パワーなのかどうか?はわからないが、彼女の服だけは濡れてもいなければ、砂も付いていない。
「えっと…暇つぶし?」
「だから、なんで疑問系やねん!
てか、ローズからも聞いてるけど、マジで言ってる?」
「マジ」
即答する魔神。
「ホンマ暇やねんな…、おまえ…。
てかさぁ…
もしスマホとかあったら楽勝で時間なんか潰せるんやろうけどな」
「ホントそれ」
………
……
…
「なぁ?」
「なに?」
「なんで、おまえスマホ知ってるん?」
「なんでって………」
「あ!しまった!」みたいな表情をする魔神。
てか、単純すぎるやろ…。
遊んだ後やから、気抜いてたんか?
何かを考えていたのか?
暫くの間を置いてから、彼女が言葉を口にする。
「えっと………、す・ま・ほ…って何?」
「なに誤魔化そうとしてんねん!
遅すぎるし、わざとらし過ぎるわ!」
「(チッ…ダメだったか…)」
「今ボソッと何か聞こえてんけど…」
「あ!そうだ!
そういえば私って、神様じゃん?
だから実は忙し過ぎるんだよね~。
…ってことで!」
オレと並んで座っていた魔神が立ち上がる。
完全に帰る気だ。
てか、今「あ!そうだ!」って言ってたよな。
なんか…逃げるための言い訳閃きました!みたいな感じで…。
しかも、その理由が忙し過ぎるからって…。
そもそも暇すぎるからオレらんとこに来たんちゃうかい…。
「あ!そうそう!
ちょっとの間だけでもアンタに会えて嬉しかった、だなんて思ってないんだからね!」
彼女はオレにそう告げると、すぐにその場から消えてしまった。
やっぱ前にオレがいた世界と絶対繋がりあるやん。
なんで隠そうとすんねやろ…。
最初のコメントを投稿しよう!