15 視察

6/6
2139人が本棚に入れています
本棚に追加
/883ページ
「お~い! そろそろ出発するぞ~」 時刻は16時を過ぎていた。 今まで通ってきた町や村で得た情報通りなら、次の村に着くのは18時頃になるだろう。 「は~い!」 とりあえずは楓香たちを着替えさせる。 荷台の中には、数日は生きていけるだけの非常食や水だけではなく、オレたちの衣類も積んでいる。 と言っても、ローズにはメイド服があるが、彼女以外は、普段着ている服は1着ずつしか持っていないので、今着替えているのは寝巻きである。 余談かもしれないが、オレに関しては、これから皇帝になろうというのに、寝巻き以外には、未だに初期装備的な布の服しか持っていない…。 この世界に来てから、宮殿などで過ごす事が多いのだが、基本的に私物は荷馬車に置いている。 私物と言っても、今のところは服や下着くらいであり、あとは、ガウィンディの宮殿でもらったタオルや寝巻き、櫛や鏡といったような物しかない。 「で、今日は何の用やねん?」 楓香とエミが荷台の中で着替えている間、オレは魔神に問いかけた。 ちなみにだが、神様パワーなのかどうか?はわからないが、彼女の服だけは濡れてもいなければ、砂も付いていない。 「えっと…暇つぶし?」 「だから、なんで疑問系やねん! てか、ローズからも聞いてるけど、マジで言ってる?」 「マジ」 即答する魔神。 「ホンマ暇やねんな…、おまえ…。 てかさぁ… もしスマホとかあったら楽勝で時間なんか潰せるんやろうけどな」 「ホントそれ」 ……… …… … 「なぁ?」 「なに?」 「なんで、おまえスマホ知ってるん?」 「なんでって………」 「あ!しまった!」みたいな表情をする魔神。 てか、単純すぎるやろ…。 遊んだ後やから、気抜いてたんか? 何かを考えていたのか? 暫くの間を置いてから、彼女が言葉を口にする。 「えっと………、す・ま・ほ…って何?」 「なに誤魔化そうとしてんねん! 遅すぎるし、わざとらし過ぎるわ!」 「(チッ…ダメだったか…)」 「今ボソッと何か聞こえてんけど…」 「あ!そうだ! そういえば私って、神様じゃん? だから実は忙し過ぎるんだよね~。 …ってことで!」 オレと並んで座っていた魔神が立ち上がる。 完全に帰る気だ。 てか、今「あ!そうだ!」って言ってたよな。 なんか…逃げるための言い訳閃きました!みたいな感じで…。 しかも、その理由が忙し過ぎるからって…。 そもそも暇すぎるからオレらんとこに来たんちゃうかい…。 「あ!そうそう! ちょっとの間だけでもアンタに会えて嬉しかった、だなんて思ってないんだからね!」 彼女はオレにそう告げると、すぐにその場から消えてしまった。 やっぱ前にオレがいた世界と絶対繋がりあるやん。 なんで隠そうとすんねやろ…。
/883ページ

最初のコメントを投稿しよう!