1 目覚め

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「…きて…、ねぇ、起きて…」 聞き覚えのある声。 それもそのはず、それはオレの妹、楓香の声だ。 先程から、やたらとオレの体を揺さぶって起こそうとしている。 だが、今日は日曜日。 妹を含め、誰かと何かの約束をした覚えはない。 「もう、なんやねんな…。 もうちょっと寝かせてねぇな…」 昨日の土曜日は休日出勤だったので、体は疲れている。 だが、妹の声が聞こえるという事は爆睡の域は超えたのであろう。 強い睡魔に襲われながらも、うっすらと目を開けた。 「やっと起きてくれた!」 その声がする方に視線を移すと、そこには安定の美少女がいた。 正直、オレは妹が好きだ。 シスコンと呼ばれても、まぁ否定はしない。 親の欲目ではないが、歳が離れている事も影響して、それに近いものも含まれているのであろう。 だが、それらを差し引いて客観的に見ても妹は十分魅力的だと思う。 「…で、何?どうしたん?」 「なんか、大変な事になってるみたい…」 つい先程までの笑顔から一転、楓香の表情が曇ったものとなった。 寝起きで思考能力が低下していたオレは目を擦り辺りを見渡す。 「…って、ここドコ?」 オレは全く知らない部屋のベッドで寝ていた。 更に、ご丁寧な事に、今まで見たこともない服に着替えさせられている。 妹も然り。 そういったファッションの服かと思っていたが、どうやら違うようだ。 「…わからない…」 不安そうな表情でオレの腕にしがみついてくる楓香。 まぁ、普通に考えて、朝起きたら違う場所にいた、とかあり得ない話である。 酒を飲みすぎて記憶が無くなったというのも考えられるが、昨日は一滴も飲んでいない。 つまり、妹とセットである事を考えると、やはり、拉致や誘拐の類なのだろうか。 「お兄ちゃん、アレ…」 少しパニックになりながらも、今の状況を冷静に考えようとしていたところ、楓香がオレに小声で訴えかけてきた。 彼女が指差したのは、部屋の片隅に飾ってあった西洋風の黒い鎧である。
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