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「…きて…、ねぇ、起きて…」
聞き覚えのある声。
それもそのはず、それはオレの妹、楓香の声だ。
先程から、やたらとオレの体を揺さぶって起こそうとしている。
だが、今日は日曜日。
妹を含め、誰かと何かの約束をした覚えはない。
「もう、なんやねんな…。
もうちょっと寝かせてねぇな…」
昨日の土曜日は休日出勤だったので、体は疲れている。
だが、妹の声が聞こえるという事は爆睡の域は超えたのであろう。
強い睡魔に襲われながらも、うっすらと目を開けた。
「やっと起きてくれた!」
その声がする方に視線を移すと、そこには安定の美少女がいた。
正直、オレは妹が好きだ。
シスコンと呼ばれても、まぁ否定はしない。
親の欲目ではないが、歳が離れている事も影響して、それに近いものも含まれているのであろう。
だが、それらを差し引いて客観的に見ても妹は十分魅力的だと思う。
「…で、何?どうしたん?」
「なんか、大変な事になってるみたい…」
つい先程までの笑顔から一転、楓香の表情が曇ったものとなった。
寝起きで思考能力が低下していたオレは目を擦り辺りを見渡す。
「…って、ここドコ?」
オレは全く知らない部屋のベッドで寝ていた。
更に、ご丁寧な事に、今まで見たこともない服に着替えさせられている。
妹も然り。
そういったファッションの服かと思っていたが、どうやら違うようだ。
「…わからない…」
不安そうな表情でオレの腕にしがみついてくる楓香。
まぁ、普通に考えて、朝起きたら違う場所にいた、とかあり得ない話である。
酒を飲みすぎて記憶が無くなったというのも考えられるが、昨日は一滴も飲んでいない。
つまり、妹とセットである事を考えると、やはり、拉致や誘拐の類なのだろうか。
「お兄ちゃん、アレ…」
少しパニックになりながらも、今の状況を冷静に考えようとしていたところ、楓香がオレに小声で訴えかけてきた。
彼女が指差したのは、部屋の片隅に飾ってあった西洋風の黒い鎧である。
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