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「どうした、楓香?」
「うんと…ごめんね、お兄ちゃん。
私、役に立ってなかったみたいで…」
「いやいや、さっきローズも言ってたけど、楓香の力がなかったら、オレずっと痛い状態のままやったし。
十分助かったよ、ありがとうな」
感謝の言葉を妹にかけてみたが、それでも彼女は何かを気にしているようで、何となくだが曇った表情のままに見える。
「…ねぇ、カーマちゃん…。
どうやったら治癒魔法って使えるようになるの?」
「う~ん…それが結構微妙なのよねん。
前にダーリンには話したことがあるんだけどね、プリンセスちゃんの魔法は、魔法っぽいんだけど、正確には普通の魔法じゃないのよね」
「えっと…、どういうことなの?」
「プリンセスちゃん、一番最初に簡単な魔法詠唱を教えたことがあったけど、全然魔法が使えなかったこと覚えてる?」
「うん。
確か、リベラに向かう途中で…初めてカーマちゃんと会った日だったよね」
「え!
それって本当なの、楓香?!」
話を聞いていたアリシアが驚きながら楓香に問いかける。
「うん。
どうしたの、アリシア?」
「一緒にトロールと戦った時、全然魔法詠唱してなかったから。
高度な魔法使いなら、無詠唱で魔法を発動させる事ができるって聞いたことがあるから、てっきりそれだと思ってたんだけど…。
だから、あの時、魔法詠唱の事とか、発動させる魔法の名前について色々と聞いてきたのね」
「うん。
他の魔法使いってどうやって魔法を使ってるんだろう?って思って。
でも、おかげで、それぞれの効果がある魔法に名前を付けたらイメージしやすいって事もわかったよ。
ありがとうね、アリシア」
「そう。
プリンセスちゃんの魔法っていうのは、彼女がイメージしたことを私が具現化してるだけなのよん。
普通の魔法使いのように、予め万能な治癒効果が約束された詠唱ができれば、何の問題もないんだけどねん」
「あの…、治癒魔法って言ってますけど、そもそも、魔法詠唱ができたとしても、それを使いこなせるのは本当に極一部の魔法使いしかいないと聞いていますけど…」
「そうよん。
よく知ってるわね、緑の髪のエルフちゃん」
そうなんや…。
治癒魔法って凄ぇな。
確かに万能やったら医者いらずやもんなぁ。
ん?
てか、確か…レベッカって治癒魔法使えるみたいなこと言ってたよな…。
やっぱ、只者じゃないってことか…。
「なぁ、カーマ。
ほな、なんで、さっきオレの腕の痛みが消えたん?」
「それはダーリンの「痛い」という感覚を無くしたい、と具体的にプリンセスちゃんがイメージしたからよん。
結果、ダーリンの左腕を包み込むようなオーラが出てきたでしょ?
あれは麻痺させる効果があるの。
鎧も着てたし、切り傷なのか?打撲なのか?骨折なのか?それがわからない状況じゃイメージのしようがないからねん」
「そっか。
じゃあ、やっぱり普通の魔法使いが使う治癒魔法みたいに漠然と「治って」ってイメージしてもダメってことであってたのね」
「そうよん。
だから、さっきダーリンに施した処置は適切だったってこと」
「要は治癒魔法が使えないわけじゃなくて、イメージが沸かんかったってだけのことやろ?
それやったら、尚更、何も気にすることあらへんやん。
これからも、オレに何かあったら助けてな、楓香」
「うん!
もちろん!」
楓香は笑顔でオレに答えてくれた。
気持ちの切り替えが早いというか、若干チョロい部分があるので、そういう意味では、対処がしやすいので助かっている。
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