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「何を凹んでいるのですか、アリシア?
あなたの力ではご主人様の足手まといになることなど、最初からわかっていたはずでは?
はっきり言って、あなた程度の戦力では大陸において何の役にも立ちません」
つい、うっかり発言してしまったオレの気遣いのない言葉によって落ち込んでしまったアリシア。
ローズはわざと冷たい言葉を彼女にかけることによって、オレの代わりに悪者になってくれたのか?
いや、それにしてもちょっと言い過ぎやろ!
オレがローズに意見しようとする前に彼女に言い返した人物がいた。
「確かにそうだが、そんな突き放すような言い方はねぇんじゃねぇか?」
ラルフがローズに突っかかる。
アリシアもラルフも自分の力量はわかっているはずだ。
だが、痛いほどわかっているからこそ、見下されたような言い方をされれば、反発したくなる気持ちもわかる。
「アリシア。
あなたはラルフのように反発はして来ないのですか?」
「…わかっていますから、自分の力が…。
でも…悔しいです!」
ボロボロと涙を流しながら、そう答えるアリシア。
ラルフに関しても、両手の拳を握り締めとても悔しそうな顔をしていた。
「…と、まぁ、こういった感じでございます」
今までの冷たい感じとは打って変わって、突然ローズが魔神に話しかける。
「大体はわかったわ。
まぁ、あとは彼ら次第だけど、とりあえずのところは合格ってトコね」
「は?
合格って何?
ローズ、どういう事?」
「はい。
実はご主人様の部下…いえ、ご主人様にとっては、行動を共にしていく仲間と言っても良いかもしれませんね。
今後、舞台を大陸を移すのであれば、彼らの強化が必須であると考えておりまして、以前から魔神様に相談していたのです」
「で、強化する前に、どんな人物なのか?を直接見ておきたかったのよ。
それに値する人物なのかどうか?をね。
…ねぇ、アンタたち。
強くなりたい?」
「もちろんです!」
「当然だ!」
「よろしい。
2人とも即答だったし、覇気も感じたよ。
でも、相当辛いよ。
生きて帰って来れない可能性だってあるけど、大丈夫?」
「はい!」
「おう!」
「じゃ、決定ね。
フーガ、そんなわけで、この2人連れて行くけど、いいよね?」
「オレに聞かれてもな…。
まぁ、一応はオレの部下やけど、本人らがそうしたいって言うんやったら、別にオレはかまへんで。
てか、修行ってどれ位の期間やねん?」
「考えてるのは1ヶ月だけど」
「そっか。
ほな、半月後に大陸に向けて出港する船は見送ることにするか…。
ちゅうかさ、お前らホンマにええんか?」
「大丈夫です。
私には精霊の加護がありますから!
絶対に、フーガ様の妻として、隣に並べるような存在になって帰ってきます!」
いや、妻ではないんやけどな…。
まぁ、このタイミングでわざわざ否定するのもアレか…。
「おう、頑張って来いよ!」
「はい!」
「アリシア、絶対に生きて帰ってきてね」
「もちろん!
だって、楓香たちと一緒に、また、お料理やお菓子作りたいもの」
「じゃ、アリシア帰ってきたら、エミと一緒にケーキ食べよ」
「そうだね。
私もエミちゃんと一緒にケーキが食べたいから必ず戻ってくるね」
「…で、ラルフ。
お前もホンマに行く気か?
…って愚問やったか」
「ハハハ、分かってるじゃねぇか、陛下。
オレはずっと強さを求めてきたんだぜ。
しかも、アンタに挑んだ時になくしたも同然の命。
そんなオレが強くなれるチャンスだ。
これほど嬉しいことはねぇですよ」
「そっか。
じゃ、まぁ、気張ってこい。
せめてクラーラには勝てるようになって帰って来いよな」
「ハハハ。
あいつには一生勝てる気がしねぇですけどね」
「フーガ、もういいかしら?」
「おう」
「あ!
魔神様、少しだけお待ちを…」
ん?なんや?
ローズのやつ、あいつらになんか言いたいことあるんか?
そう言うと彼女はアリシアのすぐ近くまで行く。
「あの…さっきは酷い事を言ってしまって、ごめんなさい…」
「えっ…いや、ローズ様。
そんな謝らないで下さい。
だって、私たちを試すためにわざとそういう言い方をしたんですよね?
むしろ、感謝してるくらいですよ」
うっそ~ん!!!
あのローズがオレと楓香以外に頭下げて謝るとか、マジで考えられへんねんけど!
「へぇ~、あの子がねぇ…」
どうやら魔神もオレと同じことを思っているようである。
「もういいかしら?」
「はい。
結構でございます」
「じゃ、転送するよ!
行ってらっしゃ~い!」
彼女がアリシアに向けて手をかざすと、アリシアはその場から消えてしまった。
そして、同様にして次はラルフの姿がなくなる。
どうやら、彼らはそれぞれ別の場所に転移させられたようである。
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