6 分かれ道

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「ご主人様、注意して下さい。 何者かがこちらに近づいてきております」 ローズはゆっくりと荷馬車を停止させると、小さな声でオレに注意を促す。 オレは荷台から御者である彼女の隣に移動し座る。 また、念には念を入れて、楓香とエミには大きな布で身を包ませ、他の荷物に紛れて隠れるように伝えている。 しばらく荷馬車を止めて待っていると、一本道の正面から一人の男がこちらに向かって歩いてくる。 そして、その捉えた姿は…人間ではなかった。 「なぁ、ローズ。 あの耳がぴょーんってなってるのって、もしかしてエルフとかいうヤツやったりする?」 「左様でございます、ご主人様。 …殺しますか?」 …さすがはローズ…二言目には殺すとか言ってるし…。 「いやいやいや…決断早すぎるやろ…。 ちょっと様子見ようや…」 オレたちはフード付きのマントコートを身に纏っている。 なので、すぐにはオレたちが魔人だということは悟られないだろう、という判断から様子見をすることにした。 「おや?あなた方は?」 不思議そうな感じでオレたちに声をかけてくるエルフの男。 どうやら、この道、部外者はあまり通らないらしい。 「旅をしている者なんですが、この先に街があるのかと思いまして…」 「ああ、旅の方々でしたか。 大きな荷馬車だから、てっきり配達屋さんかと思いましたよ。 ただ、この前、配達があったばかりでしたから、ちょっと気になって声をかけてしまいました、すみません」 この会話の感じやと、そんなにオレらのこと警戒してへんみたいやな。 てか、配達屋って何? ちょっと気になる…。 「あの…配達屋とは?」 「ん?」 ヤベ! 欲出して会話なんてしてもうたからボロが出たか? 「あ…、なんでもないです」 「ああ、なるほど」 会話を切り上げようとオレが声を発したと同時に、何かを納得したエルフの声が被った。 「え?」 「あ、いえ、他の大陸から来られた旅人だったんですね」 「はぁ…まぁ…そうなんですよ…」 と、なんとかなるかなぁ…なんて思い、適当にごまかしてみた。
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